人生の選択について

わたしは「勉強が好きだ」と言う子どもだった。
言われなくても勉強をしていた。
褒められるのがうれしかった。
内容が理解できるから、それなりの成績だった。

当たり前のように、高校を出たら国公立の大学に進むと思っていた。
そういう環境で育った。

上の二人と同じ高校を選んだ。
県内でも上から数えた方が早い進学校だった。

初めはそうでもなかったけれど
1学期が終わる頃にはクラスの上位3名くらいに入るようになっていた。
1年の頃はクラスの上位10名の名前が出たので
負けず嫌いのわたしにはいい刺激になってがんばっていたと思う。

3学期に入って、校外模試で学年1位をとってしまった。
たまたま出来が良かったんだと思う。
ちょっと、おかしいくらい成績が良かった。

それで少し満足した。
学年末テストは、サッカーを観に行っていてまともにやらなかった。

2年になってトップクラスに入った。
最初の三者面談で、担任の先生に
「このままでは○○大学は無理だ」と言われた。

大学に入ってまで学びたいことのなかったわたしが
無理矢理見つけた学部だった。

あー無理なんだ、と思ったら一気にやる気をなくした。
そして勉強をしなくなった。
もちろん授業は分からなくなった。

勉強が嫌いになった。

ちょうど1年が終わる頃、写真を始めた。
純粋に楽しかった。
わくわくした。
もっと学びたいと思った。

やりたいこともないのになんとなく大学に行くのは
時間もお金も無駄で意味がないと思っていたわたしは
写真を学びたいと思った。

初めは大学で探した。
でも国公立ではなかなか見つからなかった。
そして勉強が嫌いなのに一般教養の授業なんて受けたくなかった。
好きなことだけ学びたかった。

受験勉強から逃げたかった。

わたしは写真に、専門学校と言う進路に逃げた。

でも専門学校は楽しかった。
両親に多大なる経済的負担をかけてしまったけど
写真のことをもっと好きになったし
大切な友だちにもたくさん出会えた。

東京に出てきたお陰で、写真をやっているお陰で
出会えた人たちは本当にたくさんいるし、
みんなとても大切な人たちでわたしはとても幸せだと思う。

写真を選んで本当によかったと、心から思う。

お正月に実家に帰って、高校時代の成績表を見た。

今はもうすっかり忘れてしまって当時の学力なんてあるはずもないけど
点数だけを見ると、本当によかった。
特に1年。本当に、自分かと思うくらいいい点数が並んでた。
それが専門学校って、もったいなかったかなぁって思ったりもした。

親からはもちろん、1年のときの担任の先生からも大反対を受けたので
みんなに期待されていたことはわかっていたつもりだったけど
2年の担任の、わたしのやる気を失わせた一言について
1年時の担任の先生がその先生を叱ったことや
そのことについて先生が父に謝ったということを、初めて耳にした。

そんな、勝手に謝られても。
勝手に、そうですね、なんて言ってもらっても。

実はわたしは、記念受験をした。
センター試験は受けなくちゃいけなかったので受けたのだけど
出願の時期になってみんなの話に入れないのが寂しくて急遽受けた。
行きもしない県内の国立大学の英語200点の試験を受けた。
しかも受かった。しかも前期も後期も。

それでも行きたいなんて全く思わなかった。
あのとき大学を選んでいればなんて思ったことはない。

でも、その話を聞いて、わたしの選んだ道は
みんなにとっては失敗で、わたしは出来損ないなんだと思った。
悲しくなった。悔しいと思った。

先生、わたしは何も後悔してないよ。
たぶん大学行ってたらダメになってたよ。
だから、謝らないでください。

大切な人の期待に応えられなかったことは悲しい。
でもどうしようもない。
わたしには、写真を撮ることしか出来ません。
それで許してね。